ヒトはなぜゴミを出す・・・ 3

 裸で生まれたヒトはまず保温のために何かを纏わなければならない。外気温が高く適当に湿度があれば体温を保つことは出来るが、柔らかな皮膚は外敵には格好の獲物となる。そこで身を守るためにいろいろ知恵を絞らざるを得ない。必要に迫られての工夫、対応であったはずだ。二足歩行により”手”という機能を活用進化させて様々な道具や物を加工するという、他の動物にない特性を獲得していった。サル族の中で、体の大きい割には体毛もなく強力な腕力や牙も持たず、種敏な動きや高い運動能力もないヒトは、予想外の繁栄と生存範囲の拡大を実現することとなる。この辺りの流れは専門家の研究が山のようにあるので省くけど、この過程でゴミが、つまり使いきれない余分な物が廃棄物となって出現するようになった。地球上の生物は本来的には”循環系”の中で生きている。それは地球という閉じられた世界の必然とも言える。もちろん太陽によるエネルギーの供給という外部世界との繋がりはあるが、それは太陽系という宇宙レベルの単位のなかでのことであるから全体としては閉じられた空間だ。だから原子レベルで見ても総量は変わらずに組み換え変化しているだけなのだ。もちろん数万年数百万年も経過すればどんな物質も分解してしまうだろうから、放射性廃棄物だってプラスチックだって循環系の中に組み込まれていく。エントロピーは増大するからいずれ均され平準化して、ゴミも何もなくなってしまう。

 

 あれ!話がどうもズレてきたような、ヒトが何でゴミを出すようになったのかを考えていたのだけれど、エントロピーの話をしたらすべて終わりになってしまう訳で、結局のところ放置しておけばなるようになるという議論に終始してしまう、ヒトの生存する時間などはせいぜい数十万年くらいだろうから、その痕跡はいずれ跡形もなくなってしまう運命であり、ゴミを出そうと何を創ろうと地球史的に見れば一過性の出来事、たまたまその時間帯に居合わせた動植物が迷惑な事態に遭遇するだけ、という結論になってしまうのか。それじゃあまたね・・・とは行かないよなあ。

 

 とにかくヒトがゴミを出すようになった原因は、種としてあまりに無防備な形で生まれてきたことがきっかけとなっている。もし体毛があって二足歩行もせず、余計なことを考えない脳を持つ動物がヒトであったなら、現在のような事態は免れたことは明らかと言えるだろう。地球の隅っこで木の実や魚を少し食べ、他の肉食動物に怯えながらも、寒さの冬を乗り越え、暑さの夏に耐え、実りの秋と輝く春を楽しむ、豊かで温厚な生き物としてひっそりと暮らす、そんな選択肢だってあったかも知れない。私はそんなヒトになりたかった。

おわり

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