肉を食べること

 読んでいて辛くなる、けれど読まずにはいられない、そんな本があります。「ぼくらは それでも肉を食う」ハロルド・ハーツォグ著はそんな本です。
 肉食系が少なくなり草食系が増えつつある現代社会ですが、食文化は世界的に見ると肉食が増えていると言います。経済的に豊かになるとヒトは肉を食べたがるようなのです。この本の著者は心理学者で人類動物学の研究者ですが、ヒトとその他の動物との関わりを見つめる中で、動物を殺して食べることの是非も含めて、ペットとの関わり、肉食の持つヒトの中での位置づけを考えてみようとしています。
 動物実験を行う研究者、ベジタリアン、動物愛護運動家、闘鶏愛好者などなど、様々な角度からの動物との関わり方がありますが、ヒトとその他の動物との位置関係はどのようになっているのか、突き詰めて考えるといろいろな問題が浮かびあげってきます。危険なもの、美味しいもの、かわいいもの、気持ち悪いもの、友人、家族、伴侶・・・などなど、おそらく数えられないくらいの関わり方付き合い方があると思うのです。実験用動物という“種類”の生き物がいます。有名なのは「ノック・アウト・マウス」と言われるハツカネズミで、様々な欠陥を意図的に発生させたネズミです。その欠陥の治療研究のためにだけ特化させた実験用動物ですから、ヒトの都合のみよって生まれた動物です。食肉用の家畜も同様ですが、ペット用動物もヒトの都合で様々に改良?され、とくに犬はその度合いが激しく、原種と言われるオオカミとは似ても似つかぬ犬種が生まれています。 ヒトが自分たち以外(時として同族も)の動物(植物についてはまた別の・・・)を勝手につくり変えたり殺したりして利用することは、“地球という生態系の中でどうなのよ”という素朴な疑問があるのですが、そんなことを考えるのもまたヒトだけですから、いつもの通り“なるようにしかならない”と諦観するしかないのかも知れません。
 ヒトが成長するうえで動物性たんぱく質の果たす役割は大きく、また医療技術の向上のために犠牲となったり、“友人”あるいは“家族”としてヒトに付き添ってくれる動物の存在は、計り知れないほどの恩恵を私たちに与えてくれます。ヒトも地球生態系の中の一員に過ぎないという前提で考えるなら、ヒト以外の動物との関わり方については、常に考えていかなければならない課題と思えるのです。しかし、私とてゴキブリを見るとすぐさま叩き潰すことに専念する訳で、この辺りも含めて動物との関わり方はそう単純ではないと考えてはいます。

なに?私食べるの?  まままさか・・・