プロパガンダ

 ロシアのプーチン大統領の支持率が8割を超えた、というニュースには驚かされた。情報源が主に国営メディアのみという国内事情もあるが、さすが“プロパガンダ”の国なのだなあと思う。プロパガンダはロシア語だった。けれどプロパガンダはロシアの専売特許ではなく、ナチス時代のドイツ、20世紀前半の日本も大盛況だった。でもそれらは20世紀の遺物のように思われ、まさか21世紀になっても依然として有効だったとは、人間の習性などはそう簡単に変わらないようだ。しかし情報統制をして一方的な政治宣伝を垂れ流すことが容易く実現できるわけではない。権力と組織を同時に行使できることが前提となる。かつてのドイツも日本も、一方はナチスが、一方は軍部がそれらを実現し国民は実働部隊となっていった。

 プーチンとロシア軍部がどのような関係性なのか詳しいことは知らないが、少なくとも利害関係は一致しているはずで、ロシア国民は政権のプロパガンダによる誘導を受けているという但し書き付きではあるが、両者を支持する状況を成立させている。

ウクライナで起こっている事態は、どのように贔屓目に見てもロシア政府の見解とは違って見える。うがった見方をするなら、各担当高官があそこまででたらめな嘘をつくのは、プーチンや軍部への裏切りとさえ思えるほどのものだ。プーチンは、ロシアは、何処へ行こうとしているのだろう。ドストエフスキーチャイコフスキーを生んだ誇り高い芸術の国は、国民はどうしてしまったのか。それとも人間はプロパガンダに無力なのか、烏合の衆の域を脱していないのか、どちらにしても他人事ではない。てなことを言っても詮無いことか、とウクライナの街に転がる死体の映像をネット上で見ている。

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