二十一日目

 もう梅雨にでもなったかと思うほどの空が広がっている。吹く風は湿度をたっぷりと含んで生暖かく、五月の気候とはかけ離れている。このまま記録的な速さで梅雨入りしてしまうのか。寝苦しい熱帯夜がまた来るのかと思うと何ともげんなりもする。クーラーを付けっぱにして温暖化に寄与する生活を送る、SDGsなど何するものぞと言った前向きな姿勢を堅持して暮らす日々が間近い。

 所詮ヒトの世は永遠ではなく、下手をすればあと1万年ももたないだろうから、ジタバタせずに欲望のまま生きる選択肢があってもおかしくないと思う。地球の総人口が100億を超えた時には、それだけでヒトは滅亡のシナリオを演じることになる。温暖化やパンデミックや核戦争だけが人類滅亡の危機となる訳ではない。どうやら滅亡のシナリオはいくつものパターンがあって、それらが重複したりクロスしたりの相乗効果で、1万年どころかヒトは三千年紀を迎えられないシナリオさえあると言う。20世紀生まれの私は「デストピア」のSF映画を幾度となく観てきたが、近頃ではそれらが現実味を帯びてきたと感じられることが多くなった。

 コロナ禍がそういったシナリオを見直すきっかけとなるかも知れない、なんて楽天的な思いもあるがなかなか難しいだろう。ただこの騒ぎのおかげでヒトが環境に及ぼす影響の大きさを、具体的な形で見ることになったのだから、少なくない人たちが何かをつかみ始めているかもしれない。こう言っては実も蓋もないが、私自身は21世紀が半ばになるころには地球上に存在しないだろうから、これらのシナリオの具体化された劇を見ることはかなわない。