「罪と罰」

 言わずと知れたドストエフスキーの小説だが、実のところ題名は知っていても読んでいないという人も多い小説だ。私もその一人で、冥土の土産にと思い読み始めた。江川卓の訳だから定番中の定番だと思う。全体に古い感じのする訳で、ややもすると投げ出したくなるようなくどい言い回しと要点を得ないような話し方に、主人公へのいら立ちさえ感じる。

 登場人物の名前もひどく覚えにくい。これはロシア文学全体に言えることだから「罪と罰」だけではないのだが、その都度巻頭の登場人物索引をめくることとなる。ドストエフスキーは以前に「カラマーゾフ・・・」を読んで以来なのだが、独特のねちっこい文章は変わらない。ある作家が、ロシアは何か月も続く冬の持てあました時間の処理に、トルストイドストエフスキーを生んだ、というようなこと言っていたが、芥川のような短編ばかりではいかに鋭く切り込んでも、長い冬と夜は打っ棄れないことだけはよく分かる。

 図書館の蔵書検索で「罪と罰」を検索すると、まず単行本ではあまりに出版されていないらしく、文庫版あるいは世界文学全集の中の一冊というのが多かった。あまり買う人も居ないのだろうか。また解説本のようなものも多数出版されていて、この辺りはさすがに世界的名著という感じが伝わってきた。「読んではいけない罪と罰」なんて言うものあった。確か漫画家の手塚治虫もこの小説を漫画化していて、実はそれは読んでいる。大分はしょったものだったような気もするが、かなり面白かった。

 この小説の筋書きはあちこちで語られ、書かれているから、大まかなところは知っている。今回読んでいるのは岩波のワイド版文庫というもので、通常の文庫サイズより字が大きく読みやすいので購入した。すでに最終盤に差し掛かっているのだが、正直に言って面白いのだかどうだか分からない。主人公の“苦悩”が実のところピンとこない。“お前、何をぐぢゃぐぢゃ言ってるんだ、しゃんとしろ”とも言いたくなってしまう。私も年をとってしまった。ではこの小説はつまらないかと言えば、決してそうではなく、ついつい読まずのはいられない吸引力がある。やはり名作なのか・・・。

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そんな本を読んでいるとこうなる