天国の門

1980年にアメリカでつくられた開拓時代の映画で、3時間を超える大作がBSで放映されました。「天国の門」という映画です。何でも4400万ドルも製作費がかかり、それでいて興業的には振るわず映画製作会社の倒産の原因となったという、言ってみればいわくつきの映画です。
1890年代に実際に起こったロシア・東欧系移民とWASPと呼ばれる白人富裕牧場主たちとの土地争いで、“ジョンソン郡戦争”と言われた悲劇を扱ったもので、録画したものを数回に分けて観ました。公開当時アメリカでは1週間余りで上映打ち切りとなり大変不評だったとかで、理由はいくつかあったようですが、なんといってもあまり触れて欲しくない過去の歴史、それも自由の国を標榜する国に相応しくない内容の映画であったというのが大方の見方だったようです。
「コールド・マウンテン」を読んだ時にも感じましたが、アメリカ合衆国という国はつい最近までかなり野蛮な国で、もちろん今でも基本的な部分は変わっていないようですが、暴力と“金の力”の支配する世界であることが改めて思われる映画でした。銃と土地支配は切っても切れないアメリカの歴史であり、自分の欲望のためには“殺す”という選択肢を躊躇なく選ぶ国民が多数存在する国でもあるようです。“植民・開拓”という自分勝手な理由をつけて殺戮と強奪をしその上に築き上げられた国である“アメリカ”は、北も南の西欧文明とキリスト教によって先住民文化が破壊しつくされた大陸でもあるのです。中でも北アメリカはイギリスとフランスという産業革命の勝者が絡んだせいもあって、その後の西欧化と白人支配は顕著なものとなっていきました。そして今ではご案内のように本家を凌ぐ隆盛を誇っています。
1890年代といえば日本は日清戦争(1894年〜)の頃で、富国強兵と近代化を躍起となって進めていた時代です。「足尾銅山鉱毒事件」では周辺の山を禿山にしたり鉱毒被害者を放置していた時代でもあったのです。ですから余所様の事ばかりあれこれ言える筋合いではないのですが、アメリカ合衆国という国は大変オトロシイ国であったという感想抱いた映画でした。それに映画としての出来はかなりハイレベルのもので、なぜこれが数週間で上映終了となってしまったのか、この辺りも理解に苦しむというか、やはり“アメリカ”というか、そんな風にも思ったのでした。

なに?ここ天国?