「阿片戦争」

陳舜臣著「阿片戦争」という長編を読んでいることは先日触れましたが、この本は50年以上前に出版されていますから、もう“古典”というようなものと言ってよいかもしれません。阿片戦争という歴史的な事件があったことは知っていますが、例によって大雑把なアウトラインしか知らずにいました。幕末の志士や幕府の一部の人達が中国で起きたこの戦争に危機感を持っていた事は有名で、倒幕運動の一つの要因となっていった、何てことぐらいの知識しか持ち合わせていなかったのです。
なんせ長い本なので、やっと風雷編(2巻目)の真ん中あたりまで来ました。上下2段組7ポイント(文庫本サイズ)ですから読みでがあります。今時こんな小さな活字で2段組の単行本など作ってないですよね。初版は昭和42年で、因みに値段は490円です。
小説ですから作者の創作部分も多く入っているはずで、どこからが史実でどこからがフィクションなのかよく分からないのですが、実名で出てくる人物も多くいるようですから、かなり史実にもとづいた話となっていると思われます。このあたりを踏まえて読むと当時の清王朝とイギリスとの関係は、一方的に清王朝がやられっ放し、ということでもなかったようで、清王朝の有能な官僚による踏ん張りと、それらを支持した皇帝の英断も少なからずあったようなのです。ただ、時代に背を向けた清王朝の基本姿勢と、満州族による異民族支配という特殊性の中で、国内政治の混乱や腐敗が増幅されていった波に、中国そのものが飲み込まれてしまったという背景が、イギリスなど西欧列強に付け入るすきを与えてしまったのだろうと愚考するのですよ。まあ途中までしか読んでいないので早とちりかも知れませんが。
面白い読み物ではあります。

阿片を吸っている訳ではありません。