菜食主義

以前に「ぼくらはそれでも肉を食べる」という本を読んで、肉を食べることの切なさと言うか、後ろめたさのようなものを感じたのですが、菜食主義者でもないし魚より肉が好きなほうですから、豚や牛や鳥に出来るだけ感謝して、まあそれで勘弁してもらうしかないと思いながら今も食べています。
レオナルド・ダ・ヴィンチがある本の中で菜食主義であったと書かれています。史実であるのか作家の創作なのか詳しくは知りませが、もし事実であれば自画像に描かれたその風貌通りの印象のままであり、あの穏やかな“モナリザ”や指さす“ヨハネ”、あるいは“岩窟の聖母”に描かれた天使の作者としてぴったりのような気もします。
肉食が猛々しさや荒っぽさを生み出す訳ではないでしょうが、近頃では“草食系”と言われる若者が巷に蔓延っているらしく、すね毛をそったり日焼けを気にしたりする“男”がかなり人気を博していると言います。“優しさ”とか“上流風”がトレンドなのか、脂ぎった肉食系は敬遠されがちのようです。たしかに、レオナルド・ダ・ヴィンチが肉の塊を手にしてモナリザを描く図などは想像しにくいでしょう。
菜食が穏やかさや上品さを生み出すかどうか、牛や鹿にしたってかなり荒っぽいところがあり、食癖が性格や品格とは直接関係ないと思うのですが、どうも肉食=脂ぎったおっさん、菜食=理知的なインテリといったイメージが付きまといます。レオナルドを書いたその本によると、彼は金銭感覚も乏しく、動物物好きな上に、市場で売られていた鳥を買ってはわざわざ逃がしてやる、そんなことも日常的にしていたと描かれています。必然的に肉食はしないレオナルド・ダ・ヴィンチといったことになるようです。
妻帯もせず権力や金銭にも興味を示さなかったと言われる天才に、菜食はふさわしい食癖ではあるとは思いますが、現在の“草食系”と呼ばれる人たちは、何か創造性に欠けるというか、“菜食主義者”といったカテゴリーとは少し異なるのかも知れません。何となく見かけ倒しというか・・・、上品さを追求するのは悪くはないのだけれど。

キュートな肉食系。今は”カリ”しか食べないけど。