誰のための安保法制

安倍首相が祖父である岸信介元首相に深い思い入れがあることはよく知られています。父親である安倍晋太郎の墓参りを差し置いて、まず岸信介の墓に詣でることなどからも分かるように、相当の“御爺さんっ子”であったのでしょう。一説には岸家の母親と安倍家の父親はかなりの確執があったと言われ、安倍晋太郎は“岸家の娘婿”と言われることをひどく嫌ったとされています。
そんな安倍首相が祖父の業績に憧れに近い敬意を持つことは自然の流れであり、ゴリゴリの改憲論者で再軍備推進派でもあった岸元首相をトレースすることで、敬愛する祖父との一体感を目指すのもこれまた自然の流れと言えましょう。「60年安保改定」は日本が米国との結びつきをさらに進め、軍事面でも対等に近づけられように努力することを表明した内容であったと言われています。米国への従属的関係から同盟関係への一歩を踏み出した条約であったのです。もちろん米国は盟主ですから従属的な関係を清算できるわけではないのですが、戦前からの官僚政治家でありA級戦犯でもあった岸信介にとって、米国と差しで話す関係を築くことは念願でもあったし、政治家としての大きな目標であったようです。「安保改定」国会は荒れに荒れて、強行採決で幕を閉じました。世に言う「60年安保」が歴史に刻まれることとなります。その後岸内閣は総辞職して「憲法改正」は政治日程から外れますが、自衛隊の軍備は着々と増強されていきます。
いま国会で論議されている「安保法制案」は、岸元首相が目指した改憲を実質的に行う内容であり、米国と一緒になって自衛隊が戦闘に参加することが出来る法律となっているのです。これは安倍首相にとって“御爺さんの残した思い”を実現するために、是非とも成し遂げなければならないことであり、「大日本帝国の栄光をとりもどすこと」を政治目標としていた岸信介の孫として、それが使命と考えているのでは・・・などと思えてくるのです。

私の祖父はだーれ?