新型コロナウイルスに思う

  「COVID-19」と呼ばれる新型コロナウイルスが私たちにいくつかのことを具体的にして気づかせてくれた。空や水はこの数ヶ月格段と綺麗になり、森や野原に動物の姿が目立つようになった。これらの現象はヒトの経済活動や動きが低下したことによるもので、前々から言われていたヒトの環境への過剰な負荷がCOVID-19のおかげで顕在化された。一極集中型の労働環境も見直され始めている。テレワークや分散型の労働形態が試行的ではあるが始まり、仮にこれらが定着するようであれば東京を中心とする経済の流れは変わるかも知れない。それらは必然的に居住環境にも影響を与えるだろうし、この国の一極集中型政治経済に大変革をもたらすことも可能となる。

   テレワークを突き詰めていくと労働者が個人事業主として独立し、会社とは個々の契約によっての労働というシステムが生まれるのではないか。それによって「労働」の意味も変わることになる。労働はヒトを集合させて行われる、といった概念が覆されれば、労働者が生産点によって集約され労働運動に転嫁する機会もまた失われることとなる。となれば現在のような労働組合の形態は存在が難しくなるだろう。すでに労働組合の弱体化と形骸化は深刻なほど進行し、資本に対する有力な対抗勢力とは言えない状況が生まれている。しかし資本主義が労働者の労働によって維持されている現実は変わらない。すべての労働がテレワークに置き換わることはないにしても、労働環境のこのような変化は、場合によっては資本主義というシステムそのものにも大きな変化をもたらすかもしれない。新たな労働環境の中での労働運動というものに労働組合も社会・経済学者も関心を払う必要を感じる。

   地球という乗り物のキャパシティーが本当のところどれぐらいなのか、正直言ってよく分からない。ただ今までのような人口で今までのような経済活動を続けていたら、キャパシティー不足であることは今回のことではっきりした。地球の適正人口はせいぜい10億人程度という意見もある。すでに70億人を超える人口を抱えている私たちはある意味では手遅れの状態にあるとも言える。労働環境を手直しして全体の労働時間を減らし、労働で生まれた富の再分配を徹底して格差を縮める。全世界の富の5割を超える部分がほんの一握りの階層に集積されているという現状を変える。地球が抱える人口問題はそう言った方法で変えるしかない。COVID-19は私たちへの警鐘と思える。