人類社会の不均等発展

「銃・病原菌・鉄」という本を読んだ方は多い?かとも思いますが、あの本のエピローグの中で著者のジャレド・ダイアモンドが、ヨーロッパが非ヨーロッパを席巻した理由として環境上の4つの要因を挙げています。第一には栽培化や家畜化が容易な動植物の分布状況、次は大陸ごとの情報の伝播、拡散の違い、第三には大陸内での伝播に与えた要因、そして最後にそれぞれの大陸の大きさや人口の違い、などです。ジャレドは、人類社会が不均等に発展して結果的に西欧を中心とする世界の支配が確立していった要因は、環境によるところが大きいというのです。もちろん物事はそんなに単純ではなく、外にもいくつかの要因を挙げています。しかし不均等発展は、人種間の体力差や知能の差といった先天的なものに由来するものではなく、第一義的には環境要因があると結論付けているのです。
そして注目すべきは、発展過程において「集権化」と「分権化」が大きな役割を果たすことを指摘しているのです。ヒトが家族集団から部族集団へ、さらに大きな集団へと集約化される中で、「集権化」という集団を統率する効率的システムが形作られます。「民族」あるいは「国家」という大規模な集団になると「集権化」はさらに複雑で強固なものとなっていきます。ところが「集権化」が長期にわたって続くと様々な分野で停滞もしくは後退が始まり、場合によっては制度崩壊してしまうというのです。紀元前より西欧をはるかに凌ぐ文明を築き上げた中国は、その集権化、統一性によって15世紀以降の未統一の西欧諸国の台頭に追い付き追い越されてしまったとされています。生物の多様性が進化の原動力というロジックはヒトの社会発展にも生きているようです。
翻って足元を見るに、“地方創世”とかかんとか言いながら国主導、政府主導を一向に改めようとせず、むしろ統制強化を進める安倍政権は、強い日本、世界の日本を目指し、軍事力を背景とした“積極的平和主義”を掲げて、国内世論の反対などには目もくれずに何が何でも“戦争法案”を成立させたい意向です。“アベノミクス”がすでに破綻している現状の中で、国民の目を外に誘導し一本化することで自らの難局を乗り切ろうとする、どうも時代錯誤とも思えます。

後ろ向きね