樹木とも言いますが、私たちヒトよりはるかに前からこの地球上に登場し、それ以来は南極と北極、標高の高い場所以外には必ず生息している、言ってみればこの地球のフロンティアであり、マジョリティであり、スーパースターでもある種なのです。ヒトもゴキブリ同様にあちこちに顔を出しますが、彼らは地産地消、うろうろ歩き回らず泰然自若として文字通り大地に根を張り、太陽と水と土からもらう僅かな養分で、100メートルを超す巨木にも成長することも、数千年の時間を生きることも可能な種なのです。
樹木が多く密生する場所を「森」と呼びます。その昔ヒトにとって森は神や魔物が棲むところであり、神聖で恐ろしい場所であるとされていました。それは樹木の持つスケールの大きさや多様性、様々な恩恵をもたらす有用性を、ヒトが畏敬と感謝をもって認めていたことの表れであるとも言えるのです。「指輪物語」に登場する“エント”は、樹木の精でもあり牧人でもあるのですが、岩を砕く巨大な力を持ち、なおかつ理性豊かな知的な存在として描かれていました。私たちの神話でも巨樹は「神」が宿るところとされ、「神木」として人々の信仰の対象となったのです。
私たちの国は先進国では稀なほど緑被率が高い国として有名です。これはモンスーン地帯と言う気候的条件と、急峻な山岳地帯が国土のかなりの部分を占めるという地形的要素が多く関係していることですが、自然と折り合いをつけることで生活してきた暮らしぶりも大きく影響していると思われます。再生可能な木材と言う資源を、生活の隅々にまで利用してきた私たちの先人たちは、樹木をこよなく慈しんできた人々でした。狭い庭でさえ木を植えて、季節の移ろいを楽しんできたのです。広い庭に芝生や花を配置して楽しむ欧米の人たちとの違いを思うとき、この国の人たちの樹木に対する特別の感情を推し量ることが出来ます。                          つづく
 
 まあ 前向きな・・・