復刻版

 もうすでにCDさえ過去のものになってしまったこの頃ですが、60年代、70年代のLPレコードをCD化して発売されることがよくあります。昔聞いたLPをもう一度聴いてみたいと思っても、LPなんてなかなか手に入らないし、レコードを再生する機械そのものが今では手元に有りません。そんな時にこの“CD化”されたLP復刻版は嬉しいものと思います。そんな一枚を最近手に入れました。加藤 登紀子の「この世に生まれてきたら」というLP復刻版で、当時のままの音が入っているCDです。以前にビートルズの全LPがデジタルリマスター化されて発売されましたが、このCDはそのような大げさなことはしてなくて、ただひっそりと昔のLPをCDに移し替えただけのささやかなものです。LPは手元にないのでどんなジャケットで、どんな解説がついていたのか記憶にないのですが、たしかさっぱりしていたものであったように覚えています。復刻版も全くシンプルで、昔のジャケットをそのまま使っているようでした。解説も何もなく曲名と、一応作詞、作曲者の名前の記載、それと歌詞は印刷されているのですが、演奏者や録音日や場所の記載はありません。せめてバンドのメンバー紹介ぐらいは入れて欲しかったなどと愚痴ってみましたが、復刻されただけでも良しとすべきかもしれません。
 写真にしてもレコードにしても、それから映画なども同様ですが、記録されたものはその当時のまま(もちろん写真は変色、音も劣化するのですがD・Rすれば復活します)時間を超越してしまうので、歌手も俳優もタイムスリップして現れます。現実の当の本人は年老いていたりするので、往年の輝きは既になく、容姿も声も観るも無残、聴くに堪えないなんてことだってある訳です。誰だったか、早く死んで欲しかった人の一人に、エリザベス・テーラーを挙げた人がいましたが、晩年の彼女を見れば“よく分かる”と納得したものです。もちろんそうでない方もいっぱい居ますから、一概に早く死ねばよいなどとは言えませんが、とにかく昔のままでのメリットというのはある訳で、今回のCDはそれを実感しました。はっきり言って今の加藤 登紀子さんは声に艶が無くなっていますからねえ。歌手も俳優も上手に老いていかないと大変だということなのでしょう。

復刻版