カバー

バカー、ではありません。カバーです。本のカバーでもなく、歌のカバーです。オリジナルがあって、それを他の人が歌うあれです。いまはどうか知りませんが、以前は売れない歌手や持ち歌の少ない歌手がレコード出すときに、数合わせで歌ったケースがよくあったようです。アメリカなどでも(よくは知りませんけど)カバー曲はいっぱいあるようですが、私の知っている範囲内で言えばあれは全く別物というか、オリジナルを超えている曲も珍しくなく、国歌をロック風に演奏したり、“こぶし”バリバリのアカペラで歌ったりするお国柄ですから、個性がなければ歌う意味がないという主張が、モロ前面に出ているカバー曲が目白押しにあるようです。
映画「オズの魔法使い」で歌われた「オーバー・ザ・レインボー」という有名な曲も何人かの人がカバーしていますが、その中でTVドラマ「ER」の第8シーズンの最後のほうで使われたり、映画「小説家を見つけたら」のエンディングにも使われたものは、ギター一本の伴奏のみのボーカルが素晴らしく、まさにオリジナルを超えて新しい「オーバー・ザ・レインボー」とも言える曲となっていました。映画のクレジットを読めなかったので誰がカバーしたのか知らないのですが、歌唱力だけでなくアドリブでメロディを創る力もずば抜けている歌手のようです。
もうずーと前になりますが、ボブ・ディラン30周年記念コンサートというのがあって、そこはディランの曲を何人もの歌手が次々と歌いまくるというステージでした。言ってみれば“カバー”のオンパレードだったのですが、一人としてディランの真似はなく、みな独自のスタイルで“ディラン”を歌っていました。思わず“あれ、こんな歌あった?”と言うほどのメロディ・ラインもあり、さすがに高い音楽シーンを持った連中の集まりだわと、驚いた記憶があります。
翻ってみますと、この国の音楽シーンで「あんこ椿は恋の花」とか「潮来のイタロウ(字が分かんない)」のカバーというのはないようで、ユーミンやら中島みゆきのカバーはあるけどオリジナルを超えるものは見当たりません。和歌のほうでは「本歌取り」という伝統もあるのですが、メロディが付くとまだ未消化なんですかね。
 

今日は起きています。