武器

 ヒトはヒト以外の生き物と幾つか違った習性をもっていますが、道具を使うといった習性は抜きんでて異なった習性であろうと思われます。道具を使うことでヒトは様々なものを作り出し、自分たちの生活圏を拡げてきました。エンゲルスの「サルからヒトへの進化」では、道具を使い始めることがサルとヒトの決定的分離を促したとされています。映画「2001年 宇宙の旅」でもサルが道具を使い始めるシーンが印象的です。
 ヒトが作りだした道具の中でも武器の類は、かなり初期の頃より使われていたと考えられます。狩りに使用されたりその転用で他のヒトにむけられたり、これといった身体的武器を持たないヒトは、武器の開発に多くの時間と労力を費やしたことでしょう。生活の必要から生まれた道具としての武器は、ヒトの進化とともに生活から離れ独自の用途に特化してゆきます。現在私達が目にする武器はその延長線上にあり、ヒトの生活を破壊する目的に最大限の力を発揮する代物となっています。武器が現在のような使われ方に変化した背景には、生産力の向上と人口の増加が挙げられるのではないかと思いますが、組織(部族社会、国など)が形成されることで劇的な変化(その使用と所有)が起こったと考えられます。現在でも武器の所有は組織がその殆どを占めています。因みに武器を持つ組織を暴力組織と言います(元官房長官も証言)。
 2千年以上の昔に国家と呼べる組織が誕生し、軍隊と武器を持ち侵略、抗争を繰り返してきました。この点についてだけ言うなら、ヒトはまったく進歩を放棄しています。やみくもな侵略や殺戮はある程度影を潜めているにしても、本質的には殆ど変っていない状況が今も続いています。毎年世界中の国で行われる軍事パレードは千年を1日の如くに感じさせる行事です。世界でも珍しい戦争放棄と戦力の不保持をうたった憲法を持つこの国でも、立派な武器とあまり頼りにはなりそうもない軍隊が存在し、6割を超える国民はその事態に矛盾を感じていません。世界中の軍備に使う予算を平和目的に使うならば、現在地球が抱えている多くの問題に有効な手だてが打てる、と言われて久しい時が経っています。未だその実現は見通しさえ立っていません。おそらくこれから先も無理なのでしょう。ヒトはこの一点のみだけでも他の動物より劣っていると言えます。


こういった武器もある。ヒトは無力である。