雪の降る街

 一昨日降った雪は文字通りの春の淡雪で翌日にはあとかたもなく融けてしまいました。東京の雪は3月に降ることが多いので、雪景色を楽しむには忙しすぎるかもしれません。それでも年に数回の雪の降る街は、普段と違う表情を見せてくれる楽しみなイベントです。
 テレビの旅番組でヨーロッパなどの列車の旅をよくやります。冬の雪景色の中を車窓からの映像が流回しで映しだされる、といったものなどがこの時期良く放映されます。雪がない季節では日本の車窓風景とヨーロッパのそれとは格段の違いがあり、外の景色を見ることをほとんど無視した新幹線が幅をきかす、この国の鉄道の営業方針がよく理解できます。しかし、いったん雪景色になるとモノクロトーンに霞む田んぼや林はそれなりの詩情を醸し出すようです。一年中雪が降っていればこの国の風景も救いがあるかも知れません。
 日本の街に降る雪は水分を多く含む重い雪なので、見た目綺麗でも厄介なことが多く、雪国では決して歓迎されません。“雪が降ってきた・・”とか“雪の降る街を・・・”とか“なごり雪も降る時を知り・・・”なんていう歌が気楽に歌えるのは東京やその周辺の地域だけのことなのでしょう。けれど3メートル以上も積もる雪景色は、それはそれで十分立派な観光資源とも言え、その豪雪を利用した街づくりをするなら世界中から観光客を集められる、かも知れません。雪の無い国が世界にはいっぱい有るのですから、雪国の景色が観光の対象となるはずです。春の開通時には雪壁の中を走る立山の観光道路が、海外ニュースに紹介されていたことがあります。豪雪は世界的にみれば珍しいことなのでしょう。
 雪の無くなった街はいつもの顔に戻り、観光資源とは縁の遠い景色となっています。

雪の日でなくとも、こたつでなくとも私はまるくなります。