風立ちぬ

宮崎監督の「風立ちぬ」を観てきました。考えてみると映画館で宮崎作品を見るのは初めてで、今まではビデオやTVで放映されたもの観てきたのでした。アニメと言うと何となくTVで観るものとの思い込みがあったのです。
で、結論ですが、このアニメは実写の映画と比べても遜色のない内容と仕上がりで、アニメイコール子供といった範疇からは完全に外れています。上映後に観ていた子供が“つまんない、ずーとつまんないの”と言うのを聞いて、思わず笑ってしまいました。おそらく親に付き合わされたらしいのですが、確かに小学生低学年やそれ以下ではまるで面白くはない映画と言えます。
画面は美しく話の展開もよく出来ていて、一部で言われている“好戦的”なムードなどを感じることはありませんでした。宮崎監督が言うように一人の人間の夢を描いた映画となっていました。この映画のテーマの一つは“風”で、これは宮崎映画で繰り返し扱われる主題でもあります。劇中に「風」という歌の詩が主人公によって朗読されますが、この歌は私たちの年代には馴染のある歌です。今でもそのメロディを口ずさむことが出来る人は、私を含めて数多くいるでしょう。映画の題名「風立ちぬ」はそのまま堀辰雄の小説の題名ですが、風に向かってもなお生きねばならない、というフランスの詩から来ているようですから、いろんな風が吹いてきそうなこの時期にぴったりしそうな題名と思いました。小説が書かれた昭和13年という年は“戦争前夜”といった雰囲気が濃厚になり始めていた頃で、ある意味では今と似てなくもありません。そういったことを宮崎監督は意識していたのかどうか、しているでしょうね監督はきっと。その辺りも含めてよく出来た「映画」と感心しました。
 

風を感じるわ