「いずれの御時にか・・・」

言わずと知れた「源氏物語」の書き出しの部分です。島田 雅彦によれば“あれはエロ小説・・・”と言うジャンルの読み物となるようですが、確かに主人公である光源氏の女性遍歴が物語の主軸となった読み物で、表現方法こそ曖昧で直接的ではありませんが、書いていることは島田 雅彦の説に間違いはなさそうです。
作者の紫 式部という人物については、いろんな本に書かれたり研究の対象となっていて、幼少のころからその才能を父親の藤原 為時は注目していたという逸話が伝えられています。そんな才女がなんでエロ小説なんぞを、などと思うのは下衆の勘繰りで、男と女の交わりをあのように格調高く描くことが出来るのは、まさに才女だからこそなのです。まあ、さも「源氏物語」熟読した風なことを描きましたが、訳本と原文を一度読んだきりなのであまり偉そうなことは言えません。しかし大まかな感想で言えばそんなところになるのです。
同じ物語もので「竹取物語」というのがあります。「昔 竹取の翁というものありけり。野山にまじりて竹を取り 万のことに使いけり」といった書き出しで始まるあれです。実はこの物語は学校で習っただけで原本は読んでなく、詳しい内容については知らないのですが、あらすじで見る限りもろSFファンタジーといった物語です。で、この竹取物語がアニメとなって今月の下旬に公開されます。スタジオ・ジブリの高畑 勲監督の作品で、「かぐや姫の物語」という題名のアニメーション映画です。試写会を見た人の感想では「竹取物語」そのままだったといった話も伝わっていますから、興味津々と言ったところです。
源氏物語」といい「竹取物語」といい、書かれた時代をはるかに超えて話題を提供するその作品の力量は驚くべきものと言うべきか、ヒトの進化など高が知れたものと思うべきなのか、いずれにしても私たちは良質の遺産を手にしていると思わざるを得ません。それにしても、エロスとファンタジーというテーマは時代に関係なくヒトを引き付けるようです。

いずれの御時も眠い