ベトナムからのお土産

 もう10年以上も前になるが、ベトナムに観光旅行で行った知人からライターのお土産を貰った。その頃には私は煙草をやめていたので何でライター?と思ったが、もうライターとしては使えない壊れている“ジッポ”は、ちょうどベトナム戦争があった頃の記念品のようなものだった。あちこち傷だらけの“ジッポ”には“When I die, I know , I’m going to heaven, Because I have spent my time in hell”と彫ってあった。言わずと知れた当時のベトナムで米兵の間で流行ったとされている文句である。私はベトナム戦争をリアルタイムで知っている世代だから、このお土産に“へー、こんなものが・・・”と思ったが、今の若い世代ではお土産になることはまず無いだろう。机の周りを整理していたら出てきた古いお土産は、いろんなことを思い出させてくれた。アメリカが歴史的敗北を喫したその日、サイゴンアメリカ大使館の屋根に、ベトナム解放民族戦線の旗が翻ったのをテレビニュースで見た記憶がよみがえる。ボブ・ディランジョーン・バエズ、PPM、ウッドストック、ヒッピー、イージー・ライダー・・・、みんなあの頃に繋がるキーワードだが、ひとつの国の記憶がその当時のモロモロを思い出させるのは稀なことと言える。当事者のアメリカ、ベトナムだけでなく日本も含め、ある意味では世界中を巻き込んでの戦争があった時代だった。

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