春爛漫

 私の住んでいる所ではすでに桜吹雪が始まっていて、風に舞う花びらが地面を埋めています。ソメイヨシノや山桜、サトザクラ、緋寒桜などもいっしょくたになって花びらをまき散らし、人目を引く手練手管を見せつける花魁オンパレード(見たこと無いけど)のようです。この花びらはぬれると厄介で、おまけに乾けば今度はべったりと張り付いて取れません。この時期になると車は“花車”となって乙女チックな趣味の人にはぴったりの風情なのですが、カベカベになった花びらは洗車の時に苦労します。しかしそんな面倒をかけられても、年に一度の桜さん達のフィナーレを飾る晴れ舞台は見ていて飽きません。
 この国は植物にとってはきっと住み心地の良い土地柄で、春のこの時期には“春爛漫”“百花繚乱”といった言葉がぴったりする自然の興業が何日も続きます。秋の紅葉も春に負けないくらいの公演ですから、年に2回のこの植物さんの顔見世興行は、世界中から人を呼んで一儲けも二儲けも出来るくらいの、高い芸術性を秘めたエンターテイメントと思ったりします。
 放射性物質が風に舞ってくるなんてことは洒落にもならない訳で、エンターテイメントとしてもあまり誉められない狂言でもあるのです。

顔見世興行。