夏の思い出

 “夏が来れば思い出す・・・”、真冬なのに夏も無いもんですが突然このメロディーが頭の中に浮かびました。この歌にはいくつか個人的な思い出が有って、初めて尾瀬に行った時、確か16歳ごろだったのですが、夜行列車からバスで三平峠までガタガタゆられて椅子から転げ落ちそうになったことや、尾瀬沼にその頃はまだ渡し船があり、静かな水面をのんびり渡ったことなど、いまではやや朧になりかけている記憶が蘇ります。これも高校の時だったのですが、音楽の教師に若い美人が新任で来たらしいというので、授業にもぐりこんだことがありました。その時ちょうどこの「夏の思い出」が課題曲として授業中だったのです。音楽は専攻していなかった私はすぐにニセ生徒としてばれて、課題曲を歌うことを条件に授業を受けることになりました。もともと音楽は好きだったし、この曲も知っていましたから“シメタ ここは一番かっこつけて・・”とヤマッけ満々に歌ったことを思い出します。肝心の美人は噂ほどではなかったのでした。
 この曲の作詞作曲は、江間章子中田喜直のコンビですが、作曲の中田喜直さんはこの時まで尾瀬に入ったことがなく、詩のイメージからだけで作曲されたと言います。作曲家というのは器用な方が多いようです。最近この曲と同名の歌があることを知りました。「ケツメイシ」という汚らしい名前のグループが歌っているようですが、歌の内容は今風なものらしく余り叙情的とは言えません。だいたい「ケツメイシ」て何ですか。「ケツ」と言えばまず頭にイメージされるのは「尻」のぞんざいな言い方で、あまり上品な思い出と関係がある様な言葉とは思えません。もちろん違う意味なのでしょうが、「ケツ」から来るイメージはどうしてもその辺りに落ち着きます。中田喜直さんが存命ならきっと憤慨されたでしょう。あの方はそういったことに敏感でした。

なにが夏よ いまは冬、日向ぼっこなの。