新しき年の初めの初春の・・・

 初っ端から気取ってしまいましたが、新年でもあることですし、まあ大目に見てください。
万葉集トリの歌です。大伴 家持がおそらく万感をこめて歌ったものでしょう。
   新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事
きょう降っている雪のように よいことがつぎつぎと重なればいいなあ と言ったところでしょうか。新年にはふさわしい歌だと思います。家持が任地先の因幡の国での正月の宴で詠んだとされています。きっと都への思いが込められているのでしょう。家持はこの歌を万葉集最後の歌として選び、それを一つの区切りとするとその後沈黙し、68歳で没するまで歌を発表していません。中央政界に復帰したことが大きな転機となったとも言われていますが、その辺りの事情は素人の私にはよく分かりません。伝統ある氏族の長として、斜陽となってしまった一族の再興に懸けたのかも知れません。
 そう言ったややこしい話は別にしても、この歌の持つ新春へのあこがれにも似た思いは、毎年この時期になるとつい口に出てしまうほどぴったりします。東京で正月に雪の降ることは稀ですから、もしそんな新年を迎えることが出来た年はさぞや吉事(よごと)に恵まれるでしょう。
 しかし降り続く雪の中、車の中で新年を迎えた人や停電に震えた人達には、そんな風流に浸る余裕はなかったとは思います。あの雪はかなり重いようでしたし、常軌を逸した感じで、やはりどこかおかしいと・・・・・。

雪なんか降ってないわよ。