世界遺産

 ここ数年、あちこちの観光名所を「世界遺産」に登録させるために、国を挙げてのプロジェクトを推進されているようで、つい先ごろも「神の島・・・」とか何とかいう島や神社が“遺産”に登録されるとかされたとかで大騒ぎしたばかりでした。
 中央区日本橋東海道の起点であり、重厚な趣は都内に残る数少ない石造りの建造物であり、歴史遺産として残したいものです。が・・・、橋の頭上にかかる高速道路によって景観もへったくれも無くなって久しく、あの姿を見るたびにこの国の文化水準の低さを見せつけられる思いがするのです。言うまでもなく、あの姿になった原因は“1964東京オリンピック”という国家プロジェクトを何が何でも成功させる、土建屋国家の面目躍如を具現化した熱意であり、突貫工事の典型的見本でもあったのです。
 それがなにやらここへきて高速道路を地下化し橋本来の姿を取り戻そう、と言った動きが国交省辺りから出ているようです。きっと2020年の“オリパラ”に向けて化粧直しのつもりなのかも知れませんが、いっそのこと今の状態を反面教師として世界遺産登録申請すると考えた方が、この国の文化向上にとり有益ではないかと思ったりもするのです。もちろん街がすっきりして綺麗になることに異論はありません。電柱も地中化して共同溝を普及させることにも力とお金をかけるべきでしょう。だからと言ってここにきて唐突に“高速線を地下化する”などと聞けば、またぞろオリンピック合わせのドタバタ工事かと勘ぐってしまいます。何度も繰り返しますが、東京はいつ襲ってくるも知れない大地震に備えて、早急に取り組まなければならない課題が山積しています。日本橋の上を綺麗にすればことが済むという状況ではないと思うのです。オリンピック目当てのドタバタ工事をやるのならば、今の東京にとって本当に必要な工事は何なのかを踏まえた施策が求められるはずです。現在の日本橋の風景は、1964オリンピックの負の遺産とも言うべきものなのです。私はこれを世界遺産として登録し、肥大化し巨額の費用と山のような負の遺産を生み出す“オリンピック”という化け物の、息を止める象徴にすればよいと思っています。そうすれば訳の分からない「世界遺産」も少しは世界の役に立てるのではないでしょうか。

私にも遺産おくれ( ^ω^)・・・