なんて言って良いのか

 「ブレイキング・バッド」というアメリカのTVドラマ少し話題となっています。とある高校教師が癌になって、ひょんなことからドラッグ作りに関わり、深みにはまっていくというストーリーで、アメリカでは大ブレークしたドラマだそうです。もちろん日本ではTV放映はされていませんが、DVDで観ることが出来ます。私もまだ全シリーズを観ていないので結末は分からないのですが、観た人によれば結末は最悪、救いようがないということです。ハッピー・エンドが好きな国のドラマにしては異質なのですが、途中まで観た感想は噂通りの面白さで、直訳すれば“悪(い状況?)に突き進む”とでも言うのか、題名からもあまり気持ちの良い結末は想像出来ません。しかし何となく可笑しく、笑えるネタもたっぷり含まれていて、トランプのような単純志向の大統領を生んだ国とは思えない、さすがアメリカの多様さを感じました。もうだいぶ前の作品になりますが「エンジェルス・イン・アメリカ」もTVドラマでした。ジョージ・クルーニーが出ていた「E・R」もTVだったし、ある意味時間に制約された劇場版映画よりTVはテーマをじっくりと掘り下げられる条件を持っている、なんてこともあるかも知れません。
 なんて言って良いのか、別にアメリカTVドラマの品定めや紹介をするつもりはないのですが、アメリカという国に行ったことがないので、映像で想像するしかないというお粗末を露呈する愚を、敢えて踏まえて言うなら、あの国はたかだか300年足らずの新興国で、広大な土地と豊富な地下資源、大量の移民と奴隷による労働力で旧世界を圧倒する大国に、瞬く間にのし上がった開発途上先進国とでも呼べばよいような国だと思うのです。そんな国が豊富な人材と圧倒的な財力をもって、最先端の武器と強力な軍隊を所有して世界に派遣している、そこへ何をするのか分からないような人が大統領となって最高権力を行使できる立場についた、これはある意味“ブレイキング・バッド”をリアルの世界で行くようなものであると思えるのです。ところがどっこい、何でもできると思われた大統領令を次から次へと退ける裁判所の姿勢に、“立憲主義”という理念の具現化を目のあたりにして、私たちの国の立憲主義はどこに行ったのかと、改めて考えさせられたのです。

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