税金  その2

 近代的税制度は所得税のみならず多くの税金を作り出しました。とくに2度にわたる世界大戦は“取りやすいところから取る”あるいは“取れるところからすべて取る”といった、かなり乱暴な税制度を実施しなければ戦費調達が間に合わないという事情もあり、結果的に格差を縮小する事態を生じさせました。第一次大戦前と比較すると第二次大戦後ではそれらの傾向が顕著であったと言われます。その後につづく技術革新時代は、先進国を中心とした戦後経済の立て直しと経済成長、福祉政策の推進などによる社会投資需要の増大などにより、戦時税制を一部そのまま継続する必要に迫られたこともあり、資本収益率が成長率を下回る時代が続いたようです。しかし欧米や日本などの経済成長率が鈍ると資本収益率はまた成長率を上回り、現在もその傾向が強まっているのです。
 例によって細かいところは省いて結論に先走りしますと、今後の経済の見通しはアベノミクスのような成長戦略を実現できる方向ではなく、低成長あるいは停滞の中で、グローバルではなくローカルを基本とした枠組みの中で推移するのではないかと、私は考えています。となれば財政赤字の解消や賃金の上昇はままならない状況が続き、格差や貧困は拡大もしくは放置される恐れがあります。この辺りの成り行きはトマ・ピケティが指摘する通りであり、格差と貧困が社会的不安増大の最大の原因であることは明らかです。これらを解決するおそらく唯一の手段は税制度の効果的運用であると思われるのです。北欧並みの高税率により社会福祉の充実を図り、格差と貧困を縮小する政策の採用が今後は必要となっていくでしょう。イギリスのEU離脱やアメリカの大統領選挙の結果は過度なグローバル傾向に対する反発と、格差社会がもたらす閉塞感を背景としたものであろうと思われますが、西欧やアメリカおよび日本でも強まりつつある国家主義的な傾向と一緒くたとなって、なにやら不気味でうすら寒い思いがします。そっちに行ったら危ないと分かっていても知らずに危険地帯に足を踏み入れてしまうという、これまでのヒトの習性を思うと悪い予感ばかりが頭をよぎります。しかし20世紀後半から先進国を中心に進められてきた社会資本整備と福祉政策の流れは止まらないでしょう。この流れを支えてきたのがまさに税制だったのです。
つづく

ねむい・・・