税金  その1

 年の初めの大風呂敷です。いつもの与太ですから眉に唾を付けるなどしてお読みいただければ幸いです。
 税金の中では最もポピュラーと思われる所得税、毎年確定申告などでお馴染みの税金です。この所得に課税する税金は人類史的にはつい最近創設された税金で、日本では1887年(明治20年)に初めて導入された(ウィキペディア)ようですし、ヨーロッパでもだいたい1800年代からのものらしいのです。これは例の「21世紀の資本」を読んで知ったことですから、私にとってはホヤホヤの知識でも特筆するような情報ではありません。しかし、この所得税などの税制度がいわゆる格差解消の有効な手段であることは意外と知られていません。
 この話のネタ元は「21世紀・・」ですから、すでにこの本を読んだ人には「何をいまさら」ってなものですし、税制に詳しい人であれば「フン!」という程度のものですが、私もある時期税金(所得税ではなく資産税)と関わっていたことがあり、この本の税に関する件(くだり)には大変興味を抱きました。実のところ私も税制の在り方には一家言(まあそんな大げさではないのですが)ありまして、「民主主義と平等」に税は深い関わりを持っていると思っているのです。つまり税金はタックス・ぺイヤーとして“払う”ことで、民主主義という切符を手に入れる手段であり、社会的平等を実現する道具であると考えています。トマ・ピケティもこの「21世紀・・」の中で、「税金は果てしない不平等スパイラルを避ける手段となるし、世界的な資本集中という困った動学を制御する手法にもなる」(第15章)と書いています。貧困と格差は21世紀の主要な克服課題と思われるほど深刻さを増してきていますが、税制の民主的運用はそれらを解決する有効な手段であり、場合によっては唯一のものである可能性とも考えているのです。しかしこの“民主的運用”と言うのが曲者で、高い教養と知識を多くの人が共有する社会でないと実現が難しいと思われるのですが、現実的課題であることもまた事実なのです。
 トマ・ピケティはまた経済の低成長が格差を増幅させるとも書いています。高度経済成長期にはインフレが基調となることで、富裕層の所有する現金や金融資産が相対的には目減りします。また労働所得は増加し最低賃金も上昇することで全体的に見れば格差は縮小方向に向かうと言う訳です。しかし低成長期には政策的に経済を押し上げる税政策、例えば所得税累進課税を緩和したり法人税相続税の税率の引き下げなどが採用されて、富裕層には有利に働くケースが多くなります。しかし一般の労働者は賃金の低下や失業などに見舞われることになり、全体的に見れば格差が拡大する事態となるというのです。また資本収益率も低成長期には成長率を上回る傾向が顕著というのも格差拡大の一因と言われます。
つづく


またあ・・・