岳人

 「岳人」という山の雑誌を久しぶりで買ってみた。たしか以前は中日新聞社だかの出版であったような記憶だが、今は「ネイチャーエンタープライズ」という会社の出版となっている。山の月刊雑誌の双璧と言われた時代もあった「岳人」だが、一方の「山と渓谷」も相変わらず出版されていて、こちらは“登山ブーム”を反映して賑々しさにあふれている。「岳人」はページ数も少なくなってグラビやの写真も少なく印刷も落ちる。広告も少ない。と、ここまで書いて思い当たる節があった。たしかこの雑誌は一度廃刊となったのではなかったか。さっそく「ウィキ」で調べると2014年9月号から「モンベル」の関連会社(前出の会社)に発行が移ったと書いてあった。
 昨今の登山ブームは“山ガール”を筆頭にかなり華やかなものとなっている。もちろんどこにでも出没する“山姥、山爺”に数では負けるにしても、一時期の寂れた登山風景がこのところ一変していると言える。そういった風潮に抗うような、「岳人」本来の路線に戻ったような編集方針とも思える雑誌だ。
 今月号の特集は「北岳」で、やたらと地味で玄人っぽいコース(奈良田から白河内岳を経由して農鳥、間ノ岳北岳を目指すというロングトレイルで、途中水場が無く(もちろん天幕携行)を紹介している。北岳には2度ほど登っているが、ポピュラーなコース(最初は大樺沢から北岳間ノ岳農鳥岳という縦走で、2度目は白根御池ルートからの北岳だった。北岳にはバットレスという有名な岩壁があり、中でも4尾根というルートは登ってみたかったルートだったが、もう叶わない)での登山であったので、もちろんのこと紹介されたコースなどは知らなかった。「マークスの山」という高村薫の本についての作者インタビューが掲載されていたので買った「岳人」だが、この「マークスの山」の舞台となったコースさえかなりマイナーな登山路(池山吊尾根ルート)で、それよりさらにマイナーで困難なルートを紹介する「岳人」編集部の“心意気”には、惹かれるというか拍手したいというか、けれど、もうそんなに買うこともない雑誌だなあ、と複雑な思いを合わせて持ってしまった。でも頑張れ「岳人」。


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