ヒトの役どころ

レッドデータブックなどに掲載されている、いわゆる絶滅危惧種と言われる動植物は、その多くがヒトの様々な活動によって引き起こされた環境の変化あるいは破壊が原因とされています。乱獲、開発という他の種には無い攻撃的進出で、地球上のあらゆる地域にその爪痕があり、現在も増え続けています。
地球環境の変動や巨大隕石の衝突という、ある意味では不可避な要因によっての動植物大量絶滅は、過去にも幾度かにわたり起こり、これからも起こりうるのでしょう。けれどもヒトが自然環境に与えて続けているダメージは、巨大隕石とは言わないまでも中型ぐらいの、それも複数の隕石ぐらいには相当すると思われます。しかし40数億年の地球史から見ればその程度のダメージは特別のものではないのかも知れません。ただヒトが引き起こしている事態が、自らの絶滅を速めている一種の自殺行為に等しいものであることは間違いないようであり、この点が特異であるとも思えるのです。イナゴは大量に発生して緑を食い尽くし、死んで畑の肥やしとなっても卵という形で次世代を残します。ヒトの場合は人口爆発の後に他の種を巻き込んで、自らも絶滅危惧種出生率の低下、高齢化、食料・燃料不足、紛争などなど)となって大量絶滅を引き起こす原動力となる、そんなシナリオが用意されている気がするのです。
いずれは地球上の生物がすべて絶滅することになっている、これはもう既定の路線として明らかですが、数十億年というオーダーの中ではピンとこない、実感のない結論ともいえます。ですがヒトが絶滅するのはもっと直近の未来でしょう。現在が大量絶滅期に入っているという人類学者が試算したところでは、ヒトに残された時間は9億年ということらしいのですが、そんなに長持ちするとは思えません。原核細胞から始まった生物の歴史は、脳を異常に発達させたヒトの出現で大きな転換期を迎えたと言えるでしょう。ヒトは大量絶滅期の“狂言回し”としての役どころを見事に演じ続けているようです。


大丈夫、あとは私たちが仕切るから