死のビジネス 2

この本は上下2巻の本で、前半はイギリスを中心とするヨーロッパの武器輸出国と主にサウジアラビアとの“ビジネス”とそれにまつわるマネーのもろもろを、後半は言わずと知れた武器輸出超大国アメリカの「産軍議複合体」の実態に迫る内容と、武器ビジネスによって引き起こされた“キリング・フィールド”をルポした内容となっています。「ガモフ」ばかりでやや疲れてきたので骨休みと思って図書館から借りてきた本ですが、とてもそんな軽い内容ではありませんでした。強力な火器を作る能力のない地域に大量の武器を供給することは、明らかな犯罪行為もしくはそれに限りなく近い行為と思えるのですが、世界中ではごく普通に行われている商取引なのです。もちろん武器の禁輸出地域や取引の制限をかけているケースもありますが、それは表向きでしかないのが実態と言われています。第3国を経由してのルートや偽装しての取引、そして敵と味方双方に惜しみなく融通する“寛大さ”を兼ね備えたビジネスなのです。
今でこそ先進国もテロによって武器の効能が試されていますが、少し前までは売られた武器が使われる地域は限定的で、生産地は高みの見物で済んでいました。「9・11」が誰によって引き起こされたのか、未だ明らかになっていない部分も多いのですが、少なくともあれ以来アメリカの軍需産業は大いに息を吹き返し、先進国の多くが警察や軍の強化に足並みをそろえたのです。また、先進国の安心安全が吹き飛んだことも事実で、その後ヨーロッパや先進国各地で起きている銃撃事件や爆破事件はご案内の通りです。日本で同様な事件が起きてないのが不思議なくらいと思えるほどに日常的となっています。アメリカ国内での銃撃事件は自国産の武器が大活躍しているのですが、それでも一向に銃規制は進まず、むしろ事件後は銃の販売数が上がるという、じつに武器輸出超大国らしい動向を示しています。武器製造が雇用を生み出すとの“常識”が依然として根強い社会なのでしょう。
つづく


あえて言うなら私の武器はこのお腹