死のビジネス

アンドルー・ファインスタインという元南アフリカの下院議員で、現在はイギリスに移住して執筆活動や腐敗行為やエイズ撲滅の市民団体の活動をしている人がまとめた本「武器ビジネス」(原題 The shadow world)を読んでいます。作者は南アの下院議員時代に武器購入をめぐる収賄事件を調査、それをアフリカ民族会議の上層部から止められたことに抗議して議員を辞職、イギリスに移住して現在に至っているという経歴の持ち主です。
武器の取引にまつわる賄賂、手数料、裏金・・・など金に関するモロモロは、ほとんど闇の世界の出来事で私たちの目に見えることがありません。しかしその実態が莫大なマネー市場であることは衆知のことであり、国家予算を巻き込んだとんでもない額の財政支出と裏金の飛び交う、まさに“死の商人”が暗躍するマフィア顔負けの世界であることは常に指摘されています。
紛争や内戦といった全面戦争でない争いは世界中で途切れなく続いていますから、武器を必要とする人たちに武器をあっせんする人がいて、それらに武器を供給する会社あるいは組織が存在するという構図は、日常的にビジネスとして成り立っている世界のようです。とすればそういった“業務”に携わる人々からすれば、小麦や自動車を取引するのと同じようにAK47やロケット弾発射機および大量の弾薬を右から左に流通させるビジネスとして、何らやましいところを感じてはいない、と思われるのです。なぜなら体毛も牙も強力な爪も持たないヒトが、おそらくかなり早い時期から手にした道具が「武器」であったろうと考えられるからです。棍棒あたりから始まったそれは、弓矢や槍、刀に代わり、火薬を使った銃、さらに大がかりな武器へと“進化”してきた歴史があります。当然それらを流通させる仕組みが作られて現在に至っているのですから、ビジネスとしてはよく言われる職業と同じくらい古い職業なのでしょう。武器とヒトは表裏一体とも言えるかも知れません。
つづく


私は武器など持っていない、けれど不安はない、なぜなら欲がないから。