終活

手は震ふ 足はひょろつく 歯は抜ける 耳はきこえず 目はうとくなる

皺がよる 汚点(しみ)など出来る 背が屈む あたまははげる 毛は白くなる

くどくなる 気短になる 愚痴になる 思い付くこと みな古くなる

ここに挙げた三首は、井上ひさし著の「にっぽん博物誌」に出てくる戯れ歌です。誤解がないように付け加えれば、この歌は老人一般について揶揄したものではなく、かつて日本医師会に君臨した老医師会長についての文中に出てくるものです。しかし、老人の特徴を的確にとらえていることもこれまたあり、実に多くの示唆というか思い当たるものが多い歌でもあります。
私も実を言えば、この三首にある症状が、あちこちに出始める、とうとうそんな段階に来てしまった、もう取り返しのつかない、ああどうしよう、どうしようもないかあ・・・、とまあそんな歳となってきたのです。ファウストのように悪魔に魂を売ってまで若さを取り戻す気持ちはありませんが、今まで出来たことが出来なくなる、耐用年数がきた体のパーツに抗うことの鬱陶しさ、それらとどこまで折り合っていけるのかあまり自信はないのです。もともと長寿には興味がなかったし、これまでに出来そうなことは大体やってきたし、出来ないことは諦めたのでこれと言った未練はこの世界にないなあと、2,3年もすればそろそろ終わりにしてもよいとも思っています。ただこればかりは思い通りにはいかないことなのでどうしたものかと考え始めたというところなんですが、なかなか良いアイデアは浮かびません。
以前に安楽死についてあれこれ書きましたが、早いところこの国でも「終活」の選択肢の一つとして安楽死についての取り決めを論議してもよい頃と思います。“どう終わるか”あるいは“いつ終わるか”ぐらいは本人の選択によって決めたいよなあ。


花の下にて春・・・