原作と映像化の差

私はこのところ上橋 菜穂子の「精霊の守り人(もりびと)」シリーズを読んでいて、やっとあと少しでシリーズを全部読み終えるところまで来ているのです。ところが、この4月からNHKでこの「精霊の守り人」を放映しだしました。ちょうど読んでいるところでもあり、観ようか観まいか迷ったあげくに録画して観てしまいました。TV作品は原作からかなり離れている構成で、おまけに演じている俳優たちの多くが下手なので、まあ期待はしていなかったけれども、つくづくこの国の映画やドラマの制作現場のレベルの低さにげんなりさせられて、やはり観なければよかったと後悔などをしているのです。
TVというメディアの衰退は今に始まったことではないので、今さらあーだこーだというつもりはありません。ただ原作本をロクに読んでいないのではないかと思わせる、そんな映像化はやはり少し拙いのではないか思わざるを得ません。あくまで原作通りに創るのが映像化の基本であるなどとは言いませんが、原作の本筋を外してしまうような演出はNGではないかと思うのです。それでも演技者がそれらを補うほどの力量を見せてくれればまだしもと言うところなのですが、それさえもないと言うこととなれば、これはもう似て非なるものを出された贋作、あるいは羊頭狗肉を売る類と指弾されても仕方ないと思えます。
こういう場合、原作を全く読んでいない視聴者は“違和感がない”と言う人もいますが、原作者にとっても視聴者にとってもあまりプラスとなっているとは思えません。松本清張という作家は自作のドラマ化や映画化の際に、作品がどのように扱われようとすでに手もとを離れたものは勝手してよい、という主義だったそうです。しかし彼の作品はその多くが映像化されていますが、作家の思惑を大きく外れたものは見受けられません。推理ものとファンタジーは違うのかもしれませんが、NHKの目玉商品らしい企画だというのならもうすこしまともに創ったらと、高い視聴料金を払っているものとして思うのです。


見なけりゃいいんじゃない