同一労働、同一賃金

安倍首相は「女性が輝く社会」を目指し、「一億総活躍社会」を目指し、今度は「同一労働、同一賃金」の実現を目指すそうです。なにやら施政方針演説か何かでぶち上げるとのことですが、私などは耳を疑うというか青天の霹靂、とまでは言わないまでも自民党の総裁から出るお言葉とは思えない、甚だ場違いで違和感のある思いをもってこのニュースを聞きました。
「同一労働、同一賃金」は長い間(きっと今だってそうだろうと思いますが)労働組合運動の基本課題であり、多くの労働組合の綱領に明記されている歴史的スローガンなのです。そのような課題を、こう言っては何ですが長い間労働組合を敵視してきた政党の親玉が、何を血迷ったのか声高に叫ぶとなれば、これはどうしても眉に唾をつけて聞くしかないと構えざるを得ません。しかしながら、「賃金の引き上げ」を経営者団体に再三要請したりしている宰相ですから、自ら提唱している「3本の矢」あるいは「新3本の矢」計画の一環として、なかなか思うように上がらない賃金の底上げの一助とする目論見なのかもしれません。
労働組合側がどのような思いでこの発言を聞いているのかニュースは伝えていませんが、きっと複雑な思いで、じり貧となっている昨今の労働運動の現状を踏まえた、ため息などをついているなどと推察するのです。同じ労働であれば同じ対価、つまり賃金を支払えという要求は、働く者にとってはごく当たり前の要求であり、平等、公平を自らの運動の基礎に据えて長い間掲げてきたスローガンが、あろうことか自分たちの権利を様々な形で制限、抑圧してきた政権の長の口から出てこようとは思いもよらぬ事態と、普通であれば驚愕してしまうのでしょう。ところがそうはならない現状があって、そのあたりに今日の労働運動の問題点があるとも考えられるのです。
まあ言うこととやることの齟齬が多い宰相ですから額面通りには受け取れずに、あまり当てにしていないのであれば反応のしようがないとも言えますが、もしかすると、同一労働、同一賃金の意味を取り違えているかもしれない恐れもあり、私たちがスローガンとしてきたものとは同音異語なのかもしれず、だってねえ、本気でその課題をやろうとしたら資本主義がひっくり返ってしまうもの、やはり口先だけでしょうね、今回も。

足先だけ