シンプル・ライフ

私たちの世代は欲求不満が束になって歩いていたようなもので、見るもの聞くものを次から次へと欲しくなってしまうという、いまから思えば文字通りの餓鬼であったのです。車、バイク、オーディオ、カメラ・・・と数え上げれば限がないほどに物に対する欲求が強く、よく言われることですが団塊世代が居なくなると消費が落ち込み不況となる、と真剣に考えられているほどです。
車やバイク、オーディオといったものが売れなくなっている、という話はかなり前から伝わって来ていましたが、近頃ではパソコンもその仲間入りをしたようで、人口減少と消費意欲の減少はこの国の先行きに暗雲を漂わせている、なんて声も聞かれます。これは若い人たちの消費動向と関係があるようで、物を欲しがらない若者が増えているという傾向が顕著であると言われます。理由はいろいろあるのでしょうが、その昔「シンプル・ライフ」などと言うことが上すべりで流行った時がありました。ひょっとすると、本当の意味での「シンプル・ライフ」が根付き始めているのかも知れません。作家の池澤 夏樹が何日か前の新聞で、若者の物を欲しがらないことについて好ましいことといった意味のコメントを書いていましたが、いわゆる“成長戦略”とは違う道を次世代が歩み始めているとしたら、人類の未来はやや先に延びるのでしょう。ゆっくりとガツガツせずに・・・なんて私が言うのはおこがましく、また言う資格もないのですが、そんな時代が来ればよいと心から思います。

何もいらない、眠りさえあれば・・・