オペラ

“芝居を観る”というのはかなり非日常の行為であって、今までに観た回数は4、5回もしくはそれを少し超えるぐらいで、両手の指ではかなり余るほどの芝居しか観ていないでしょう。これがオペラとなると一度きりで、それも友人が端役で出ているという、言ってみればお付き合いで観た「カルメン」だけでした。
先週の土曜日、国立音大の定期公演で「コジ・ファン・トゥッテ」を観たのです。「腰巻取って」などと駄洒落て題名だけは知っているのですが、劇場で観たのは今回が初めてでした。音大の講堂で現役院生も出演するオペラなので料金が安いというのが売りですが、レベルはかなりのもの(私の感想では)で充分と楽しませてもらいました。土曜の午後なので途中で眠くなるかなとの心配もあったのですが、休憩をはさんで3時間半の長丁場を持ちこたえました。モーツアルトの作品ですから聴きやすいということもあるでしょうが、正味3時間の舞台を観るのはもう何年も経験のないことだったので、やや不安もあったのです。
この作品の脚本は、「フィガロ」や「ドン・ジョバンニ」と同じくロレンツオ・ダ・ポンテによると会場でくれたパンフに書いてありましたが、今から見れば女性蔑視というか、かなりひどい女性観の下に書かれた代物です。あの当時(18世紀)はそんな時代だったのかと改めて思ったのですが、よく考えてみると今でもあまり変わらない人たちもいて、さかんに“女性が活躍する社会”と言っている人などは、実際にやっていることが18世紀とさほど変わらないのではと思えたりします。
コジ・ファン・トゥッテ」の主な出演者6人のうち、良かったのは小間使い役のデスピーナをやった福田 亜香音という現役院生で、やや声量が足りないような気もしましたが、伸びのある声と確かな音程で演技も軽やかなしぐさでした。きっともっと上手くなる人なのでしょう。機会があればまた聴いてみたい歌手でした。

なに?私の声聴きたいって・・・