「戦争に巻き込まれたことはない」

安倍首相が繰り返し言明している60年安保改定後のこの国のことです。敬愛する祖父の実績を誇らしげに言うことは当然としても、一国の宰相としてやはり実態を正確に把握していない、身内贔屓の論評としか思えません。
なぜなら60年以降にアメリカが各地で関わった戦争は、地域で起こった紛争に圧倒的な軍事的優位を持つアメリカが介入するケースが殆どであり、正面切っての宣戦布告をしたものではなかったという実態があります。また、ソ連(当時)や中国といった軍事大国とは直接戦闘はしないという巧妙な戦略的路線によって行われた、いわば局地戦を主体としたものであり、必然的に日本が渦中に巻き込まれるような戦争では無かったということです。そういった事実に目をつむり、安保条約の抑止力によって平和が保たれたとするのは、詭弁を弄しているか、あるいは戦略的観点に全く無知な者の言動と言わざるを得ないのです。
仮にアメリカがソ連や中国と戦火を交えるようなことになっていたら、真っ先に日本国内の米軍基地は攻撃され、基地周辺の町は惨憺たる状態になっていたでしょう。そんなことは戦略的・戦術的なイロハです。また、ベトナムやイランなどアメリカが紛争に介入した国から、沖縄や横田がゲリラ的な攻撃を受けなかったのは全くの偶然とも言え、条件と機会さえ整えばいつ起きてもおかしくなかったと思われるのです。「新安保法制」によって米軍の後方支援を自衛隊が大っぴらにするようになれば、日本国内の米軍基地や自衛隊の基地はまさにテロのターゲットとして狙われることとなり、基地だけでなく街そのものさえテロの対象として攻撃される可能性もあります。
自分の都合の良いように歴史を解釈し、それに基づいてあーだこーだというのは勝手(例えばこのブログのように)ですが、そういうことは政治家を辞めてからいくらでもやればよろしいと思うのです。

危ういことは私たちだけに許される・・・