春のギャラリー 再展示展第3日目

今日の絵も昨年お見せしたものです。秋の中央アルプス千畳敷カールから宝剣岳に向かう鞍部、“乗越浄土”を描いたものです。青い空と白い花崗岩の岩場、紅葉のカールといった秋の山の定番コースものですが、強調と省略がなかなか気持ちの良いリズムを創っています。
この絵は荒目のキャンバスに描かれています。キャンバスは細目、中目、荒目と3種類あり、描く対象や画家の好みで使い分けます。3種とも生地は麻ですが、キャンバスとは帆布のことですから、もともとは目の詰まった布に下地を塗って絵を描いていたのでしょう。麻の外にはベニヤ板やボードの上に描くこともあります。厚塗りする抽象絵画などは板やボードを使い独特の質感を出したりします。猫好きとして知られる画家、藤田嗣治は細目のキャンバスに汗取りパウダーを混ぜた白絵具を使い、女性の肌の独特の白さを表現しました。因みにキャンバスの値段は中目が一番安く、荒目と細目は高いのです。

乗越浄土         油彩 10号