レーニンの早とちり

何を突然言い出すのかと思われてしまいそうですが、「オリガ・モロソヴナの反語法」という本を読んで表題のように思ったのです。米原 万里という作家の本ですが、日本共産党の幹部だった米原 昶衆議院議員の娘さんで、ご本人も日本共産党員でしたが除籍されてしまったという経歴の持ち主です。この辺りの事情は“ウィキ”に載っているので省きますが、父親の関係でチェコソビエト人学校に入り、そこでの体験などをもとに書かれた本です。で、まあレーニンは早とちりしたなと思った訳です。
この本に書かれていることや、中国や北朝鮮のことを考えると、やはりマルクスが考えた通りに、資本主義を高度に発展させた社会でないと社会主義は実現せず、仮に革命を起こしても無理が生じ、その本来の目的が失われてしまうのであったのです。その最大の原因は、多くの民衆の教育の低さと民主主義的意識の欠如です。しかし、資本主義が高度に発展しなくとも、武力によって資本主義の弱い部分から労働者の権力を打ち立てることが出来るとレーニンは考え、「資本主義の不均等発展」とかいう理論をもとにロシア革命を始めたのです。しかし革命後の混乱や、スターリンの独裁と恐怖政治、その後の様々な醜悪な事態など、マルクスの考えたような理想社会はついに実現することなく、ゴルバチョフによってソ連邦は幕を閉じます。そしてロシア革命に倣い、中華人民共和国、朝鮮社会主義民共和国など後続の社会主義革命を始めた国々は、みな資本主義の初期さえまともに経験しない社会であったことが、その後の共産党一党独裁を、単に“独裁政権”として存続させてしまい、高度に発展した資本主義社会の特徴である民主主義の確立を封じ込めてしまいました。
もしレーニンが早とちりをしなければ確実に歴史は変わっていたと思われ、もちろんマルクスの言うような理想的な社会制度が実現することも無かったかも知れませんが、現在の私たちは違った社会体制を見られたかもしれませんし、ベトナムや朝鮮、ドイツで起きた“分断”はなかったはずです。蛇足ですが米原 昶という名前には私個人がやや思うところもあり、彼が議員であったころの同僚議員の甥っ子などとも関係があったりして、それやこれやで面白く読ませていただきました。

そう言う自分もかなり早とちりでしょ。