アイヌのこと

私は、というよりも私たちはといったほうが良いでしょう、「アイヌ」についての知識はほとんどありません。歴史的には石器時代まで遡るでしょうし、そもそもこの島のあちこちに住んでいた先住民と言われています。縄文人と身体的特徴が似ていることもあり、縄文人アイヌといった説もあるようですが、和人と呼ばれた人たちのルーツも縄文人と重なる部分があるようで、単純にアイヌ縄文人とはならないのかも知れません。弥生式の農耕を主とする和人たちがこの島の主流となって、狩猟や採集と主とする縄文系の人たちが北の大地に数多く残った、その人たちがアイヌ(もともとは人という意味)名乗ったとも言われています。有名な坂上田村麻呂による蝦夷"征伐"など、大和朝廷系の東北地方への進出はアイヌ民族にも大きな影響を与えた出来事であったのでしょう。
江戸幕府以後による北海道経営は、アイヌ民族にとっては迫害と屈辱の歴史であったと言われ、その歴史は明治以降まで引き継がれます。文字を持たなかったアイヌは口伝による伝承しか残さず、文化や伝統の多くが闇の中に葬り去られたものとなっています。
池澤 夏樹著「静かな大地」はそういったアイヌの伝統や文化に光を当てて、私たちの島に暮らしていた先住民たちの生活と思想の一端を垣間見せてくれます。ひっそりと自分たちの暮らしを守ってきたアイヌの人たちの智慧や自然に対する畏敬の気持ちは、現在で言うところの“ナチュラリズム”そのものであり、自然の営みと時間軸を一にした豊かで静かな生活であったようです。北米先住民と同じような名前のつけ方(例えばアイヌ名、オシアンクルは“後から生まれたもの”という意味となる)は、1万年前にアリューシャン列島をこえてアラスカに渡った人たちと同じルーツを持っているのではと思わせます。
続く

私はカムイ