自慢話

誰でも一つや二つの自慢話を持っていて、歳をとってくるとこれが度々出てくると言います。私もその域にかかっていますから一つぐらいは自慢話をしてみたいのです。
まだ20代、と言っても30歳にあと僅かといった頃でしたが、当時は渋谷に勤務地があってそこでの出来事です。“あんた いい男だねえ”と言われたのです。勤め先にその方が用事で来て、たまたま私が応対しただけの縁で、なんで言われたのかは忘れましたが、今となってもうれしい思い出です。後にも先にもそのように言われたのはあれ一度きりのことです。その方は勤め先の近くにあった山手教会の平山牧師の奥さんでした。牧師の奥さんというよりは近所のおかみさんという雰囲気の方で、当時もうかなりの御歳であったように見えましたが、言われて思わず笑ってしまったことを覚えています。なんせ神様に仕える方の関係者ですから、そのような方の口から出るとは思われないような“べらんめー”口調で褒められると、なんとも楽しくなってしまったのです。当時の山手教会は“地上は天国、地下は地獄”と言われた建物で、あの“ジャン・ジャン”が隆盛を極めていた頃でした。
ついでにジャン・ジャンの話も一つ。
ジャン・ジャンが無くなってからもうだいぶ経ちます。あの頃は仕事帰りに幾度か聴きに行ったり観に行ったりしました。原田 芳雄がジャン・ジャンに出たことがあって、彼はブルースがなかなか上手で、あの声ですから想像がつくと思いますが、胸をはだけながらの熱唱を楽しみました。その時バックで演奏していたグループが宇崎 竜童たちで、もうすでに大メジャーの“ダウンタウン・ブギ・ウギ・バンド”だったのです。当日のポスターにはそんなことは全く書いて無くて、途中で原田が紹介して分かりました。会場は思わぬハプニングで大いに沸いたことを覚えています。狭い会場で、スピーカーの前にでも座ろうものならコンサート終了時には頭が痛くなるような所でした。
今は昔の話です。

なあに 自慢話って 私のこと