コールド・マウンテン

今から百数十年しか遡らない、とても荒っぽく物騒なアメリカ合衆国の、神話とも言えるような筋立ての小説です。発表されてから20年ほど経っていますから、すでに読まれた方も多いと思います。ハリウッドで映画化もされて、ニコール・キッドマンやレニー・ゼルヴィガー、ジュード・ロウなどが共演しました。映画は見ていたのですが、それほどの記憶も残らず、たしかレニーがアカデミーの助演女優賞かなにかとったことぐらいしか覚えていませんでした、
図書館で手にとり、きっとつまんないかなあ、と思いながら借りてきました。一緒に借りてきた他の本を先に読み、時間が余ったから読んでみるか、ぐらいのつもりで読み始めたのですが、これが途轍もなく面白い本でびっくりしました。様々なエピソードがいくつも語られ、2時間ぐらいの中には詰め込めない内容なので、映画化するに当たってはかなり無理があったのでしょう。
著者のチャールズ・フレイジャーという作家はネットで検索してみると、この本のことしか出てこないので、日本では他の翻訳はないのかも知れません。アマゾンで検索をかけるとコールド・マウンテンは中古本しかなく、重版はされていないようでもあり、やはりそれほど注目されていない作家のようです。
けれど私にとっては眠気を追っ払うには充分の本で、中古本でも良いから買いたくなるほど気に入りました。映画ではレニー・ゼルヴィガーが演じた“ルビー”というたくましく、賢く有能な女性の生き方、考え方には、“そんなあ 出来過ぎだよ”と思いながらも惹きこまれてしまうほどの魅力を感じました。
荒々しい時代の中で生きてゆく登場人物たちは、作者の理想像を具体化したものでしょう.よく使われるフレーズですが“時代に翻弄されながらも力強く生きる・・・”という表現がぴったりするキャラクター設定で、気高く詩的に生き生きと描かれています。やはりアメリカという新しい国の「神話」なのでしょう。それにして、たった100年ちょっと前のアメリカは物騒で野蛮な国だったようです。

私も毛高く生きています。