円安のツケが来始めた

円安、株高で“アベノミクス”は順調、とばかりに記者会見で胸を張った首相ですが、すでに円安効果により輸入品の価格がじわじわと上がり始め、加工品の原材料を輸入に依存する産業は仕入れコストの上昇を価格に転嫁するという、ごく当然の流れの中で食料品などを中心としたミニインフレとも言える状況が生まれています。食料品以外も近いうちにはコスト転嫁をしてくることは間違いなく、一部輸出企業のボーナス増額程度の“賃上げ”でお茶を濁され、ほとんどの産業では賃上げどころの騒ぎでないという実情を、首相やその周辺はどのように判断しているのか、まったく手前味噌もいい加減にしてほしいと思います。
個人の懐具合が赤字となると同時に、国の貿易収支もこのところ赤字が続き、10月の経常収支が9か月ぶりに赤字転落となったと財務省から発表されました。経常収支の赤字は貿易外収支もひっくるめての決算ですから、言ってみれば本当の赤字が始まったということです。今後予想される原材料価格の転嫁に伴う輸出価格の上昇や、引き続く円安圧力などが続けば、事態は深刻となると思われます。“アベノミクス”などと言って浮かれている場合ではなくなるでしょう。また、輸出産業にしたところで、すでに生産拠点の多くを海外に移している企業にとっては、円安が長い目で見れば不利に作用することは明らかで、国内の雇用環境の改善は進まず、賃上げも期待できないとなれば、いずれは“アベノミクス”も“ダメノミクス”となること必至と思われます。
インフレと失業、賃上げなし、財政赤字貿易赤字双子の赤字。これは格差社会の最たる国、アメリカの今の実態です。このような状態に私たちの国が向かおうとしていると考えられなくはない、経常収支の赤字はそんなことを示していると思われるのです。

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