やっとのことで

「ミシェル 城館の人」がやっと読み終わりました。もちろん、これでモンテーニュが理解できたのでもなく、堀田 善衛の言わんとするところがすべて了解されたのでもありません。しかし、今まで気にも留めたことがなかったモンテーニュという思想家が、私の備忘録の中に書き込まれたことは確実で、何かの折に「エセー」という書物に書かれた文言の断片が思い出される、そんな予感はします。良い本に巡り合うということは、経験の蓄積に匹敵するもので、上手くすれば自分の血となり肉となります。
1592年の9月に59歳で死去したというミシェル・ド・モンテーニュが、私の中に何を残してくれたのか今のところ定かではありません。しかし「私の主要な特質は 自由と無為」という、あるいは「自然はやさしい案内者である。だが、それにも劣らず、慎重で公平な案内者である」という文言は、今の私の中に全く違和感なく入りなお同化するものであるのです。16世紀に生きた思想家が、堀田 善衛という20世紀の作家によって、21世紀に生きる私へメッセージを届けるという、本という媒体が為す不思議を感じます。
とまあ気どったことを書きましたが、騙し騙しでやっとのこと読み終えたというのが実態です。けれどこれからは職業欄に「自由業」と書こうと思うくらいのインパクトはありましたね。そうなんです、私の主要な特質も“自由と無為”、自らに由ること、何も為さ無いことなんです。私にとっての「ミシェル 城館の人」は、まあその程度の理解でしかなかった、とも言えます。

私の特質も自由と無為、筋金入りよ