ステッキ

私は道具類が好きですから、余計なものまで買ってしまうことが多く、身の回りにはガラクタが溜まり、ロクに使わない道具類が場所をふさぐという、シンプル・ライフとはかけ離れた生活を続けています。そのくせ、「森の生活」に憧れたり、「無用の物どものみ取り積みて、所狭く渡しもて来る いと愚かなり」などという「徒然草」の文言にシビレルという、実に矛盾した精神構造を抱えながら生きています。 
だからと言ってそれらを修正すべくことを起こすでもなく、ダラダラとなるようにしかならないと、高をくくった暮らしぶりの中に居るのですが、道具類に囲まれていると何となく落ち着くこともまた事実で、これも道具の持つ魅力かとなどと勝手に自分を納得させています。そんな今の私の気に掛かっている道具がステッキで、“杖”ではなくあくまで“ステッキ”という道具なのです。
シャーロック・ホームズも常に持ち歩くあのステッキ、あの銀の取っ手が付いたステッキが何とも粋でかっこよいと思えるのです。もちろんあのようなステッキを持ち歩くにはそれなりの格好をしなくてはならず、サンダル履きでTシャツではTVの三流お笑い番組となってしまいます。それに、街中で使うステッキと田園で使うステッキは種類も形も違うので、TPOも考えなければならず、帽子も必須アイテムですからかなりの大事になるのです。また、銀の取っ手のステッキというのはかなり高価もので、そう簡単に買えるものではないから、何本もそろえるという訳にもいかないし、まあ、どれもこれも実現が難しいという厄介な道具でもあるのです。
仕込みステッキというのもあり、“座頭市”の真似をしたい人などにはうってつけの物ですが、これはまた別の趣味の分野ですから横に置くとして、ステッキという素敵なものを手に入れる算段はないかとつらつら考えているのです。

まあ 年相応の物だわね