キリング・ミー・ソフトリー・ウィズ・ヒズ・ソング

ロバータ・フラックが歌い大ヒットさせた有名な曲の題名です。もう大分前になります。「キリング・ミー・ソフトリー」という映画とは関係ないようで、時系列的にも歌のほうが早いようです。“キリング・ミー”などというと、かなり物騒というか、考えようによってはかなり艶っぽい雰囲気が漂います。そんな言葉を一度ぐらいは聞いてみたかった思わなくはないのですが、腰が引けてのけ反ってしまいそうですから縁のない言葉でもあります。
ベートベン、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」の第2楽章から第3楽章に移る時に、オーボエの長吹きがあります。オーボエがソロとなって1音を長吹きし、頃合を見計らってピアノのソロがダダダーンと入って第3楽章が始まるのです。ピアノ弾きがダダダーンをなかなか弾かないと、オーボエは息が続かず悶絶してしまうそうです。これを演奏中にやったピアノ弾きが居て、オーボエ奏者はひっくり返ってしまった、と嘘のような話を何かの本で読んだことがあります。ピアノ弾きがオーボエ奏者に恨みがあったのか、単なる悪ふざけだったのか忘れましたが、仮に仕返しであれば、こういった仕返しは何となくユーモアがあって憎めません。“歌で殺す”のではなく、ピアノの後出しで卒倒させる手もあった訳で、音楽も様々な利用法があるものです。演奏会でこの曲を聴くときには、この場面でオーボエ奏者の表情を見るという楽しみ方も増えるのですが、ただし、この曲の一番スリリングな部分で演奏に集中できなくなりますから、あまりお勧めはしません。
1973年にリリースされた「キリング・ミー・・・」は、「やさしく歌って」という邦題でCMソングともなり、一世を風靡しました。いまでもスタンダード・ナンバーとしてたまにラジオやTVから流れることがあります。そのたびに「皇帝」のピアノ弾きに悶絶させられたオーボエ奏者のことが頭に浮かびます。

殺された訳ではありません。