新聞配達

ある本の中に新聞配達所の生活の一端が描かれた部分がありました。私も中学生のころ小遣い稼ぎで新聞配達を半年ばかりやったことがあり、高校時代の友人が大学に行くために配達所に住み込みで勤めたりしたこともあったので、その実態をある程度知っています。本に書かれていた内容はかなり過酷な勤務状態であるようでしたが、それでも実態を反映したものと思える描写でした。
早朝の配達をするための準備や、雨の日のポリ袋がけ、チラシの折り込み、夕刊の配達や集金まで、細切れではあっても土曜日曜もない毎日の連続は、ハードな職場であろうと思います。毎日自宅のポストに入っていることが当たり前の新聞ですが、それを支えるための労働環境は決して楽なものではないのです。近頃では外国人と思われる人たちも配達をしているようでもあり、3K職場同様の雇用実態に甘んじる人によって支えられているとも言えるでしょう。新聞の宅配制度に限らず、通販やネット販売の配達制度は、買ったものをドアまで運んでくれる便利さで、今では運送業界の主要な分野となっています。それも「翌日配達」やら「時間指定」「クール…」といった速さと便利さを競う内容となっていますから、一日中宅配便の車が街を行き交っていることが常態なのです。当然それらを支える職場環境はかなりキツイものとなっているはずで、会社によっては車や燃料費を個人持ちにしての請負契約といった、配達制度丸投げの業界さえあるほどらしく、派遣や非正規雇用が蔓延するこの国の状況がそのまま引き継がれているようなのです。
毎朝きちんときちんと配達される新聞や宅配便は、私にとっては大変便利なものですが、何の躊躇いもなくそれらを利用することに、この頃ではやや引け目を感じてしまいます。ヒエラルキーについて書いた時にも思ったことですが、理想と現実のギャップにはやはり限りない無力感が生まれてしまうようです。何を今さらとのご指摘は重々承知しておりますことは申すまでもありません。
 
 まあ 分かっているわね