平家物語

 “祇園精舎の鐘の聲・・”で始まるあれです。誰でも一度ぐらいは耳にしたことのある名調子の出だしは無常観を漂わせ、歯切れのよい七五調と相まって私達には馴染みの古典の一つです。なんて書くといかにも全巻読んでいるようですが、ご多分にもれず最初のさわりしか知らず、ダイジェストで中味は拾い読み程度の知識しかありません。軍記物の代表作と言われ、成立したのは鎌倉時代に入ってからで、平家滅亡後数十年経たのちに執筆されたとされています。琵琶法師の語りでも有名なように、音曲に乗せて語る、今で言うラップみたいなものでしょうか。
 NHKの大河で「平清盛」を今年はやると言うので、ちょうど良い機会と読み始めました。当たり前のことですが、NHKの大河は清盛個人にスポット当てて制作しているようですから、「平家物語」とは別物のストーリー展開となっています。「NHK」も3回ほど見ましたが、清盛役の俳優が下手なので興味がそがれます。「平家物語」のほうは重層的な展開でテンポも良く、TVよりよほど臨場感があります。それに大意を掴む程度であれば古文の知識はそれほど必要ないので、気楽に原文で読むことが出来る取りつきやすい文章でもあります。
 「平家物語」を読んでいて感じるのは、あれだけのデーターをどのように集めたのかということです。芥川賞タイプの読みものではなく直木賞タイプですから、おそらく膨大な資料が元になっていると思われるのです。作者は誰なのかよく知りませんが、徒然草の記述には「行長入道」という人が作って盲人に語らせたとあるようです。当時個人で集められる資料はたかが知れていたでしょうから、誰かパトロンがいてそこから資料やら話やらを集めて集大成したのではないでしょうか。とにかく大変な労力と時間がかかったと思われます。「源氏物語」はこの点かなり毛色の違う読みものですから、紫式部の体験や見聞きしたものが下敷きとなっていて、それを膨らましたり色づけしたりすることで作られたのでしょう、かなり異なる成立過程があったものと思われます。あの時代にああいったものを作る理由とメリットが何処にあったのか、下手なドラマよりよほど興味深いものを感じます。
      
        

      退行の次は平家ね、かなり疲れているんじゃ・・・。