数字

 いろんな物事を数字で表現するとリアリティーがあるように思えます。相手を説得する時などには数字の外にグラフを使ったりもします。数字と言うのはある種の魔力があるというか、言葉とは違った表現力が備わっているようにも思われます。現代の理論物理学が数式によって成り立っているのは周知のことですが、数字と数学記号を組み合わせた数式という言語に、宇宙の神秘の解明がかかっているなどと言われていますから、ますます数字は魔力じみてくるかも知れません。
 そんなややこしい数字ではなくとも、身近な数字にも不思議な説得力があります。「統計」という数字です。しかしこの数字は使いようによって全く別の結論を引っ張り出したりしますから、よほど注意して吟味して判断しないと、とんだ間違いを起しかねません。そして誰でもこの「統計」という数字を創る訳にはいかないので、学者やそのみちの専門家の、言い方を変えればバイアスがかかった、フィルターを通した数字を私達素人はみたり使ったりするのです。ですから、そう言ったことを踏まえ統計された数字を捉えるとして(えらく前口上が長く、その上くどい言い回しですが)、ある一冊の本を面白く見ています。「ベーシックナンバーズ」という朝日出版社発行の本です。中味は現在明らかにされている身の周りの様々な統計上の数字などを集めたものです。よく新聞やニュースなど使われる“日本人一人当たりの○○・・”とかヒトの臓器の重さ・・・などなどいろんな数字が網羅されています。中でも面白いと思ったのは、日本の宗教徒の合計数は2億人を超えるというものです。たしかこの国の人口は1億2千8百万程度なので、人口をはるかに超える宗教人口が存在するという不思議な数字なのです。これは複数の宗派もしくは宗教団体に在籍している人が多いということで、神社の氏子がお寺の檀家であったりするこの国独特な事情が反映しているものらしいのですが、宗教に無頓着な国民性がこんなところにも出ているのかと思ったりしました。また、米の消費量がこの50年の間で半減していることなども数字で明らかにされています。「TPP」が農業に壊滅的打撃を与えるという議論を考える時、農業の衰退はそれだけではないと思える数字です。
 
これらの数字が丸呑み出来る訳ではないでしょうが、数字の持つ客観性と魔力を考えさせてくれる面白い本(資料)でした。なんてね。