気にかかる絵

 上野の西洋美術館の常設展示にある一枚の絵が気にかかります。作者の名前が思い出せないのです。いわゆるメジャーな画家ではないのですが、美術館に展示されるくらいですから名のある画家と思います。室内を細密に写したもので、中央にその部屋の白い扉が開いた状態で描かれ、手前に置かれた机の磨かれた天板に扉が写り込んでいるのです。扉の向こうの部屋には奥さんがピアノを弾いている、という構図です。この絵の主題はこの白い扉であろうと思われるほどに念入りに描き込まれています。説明書きによれば、自分の奥さんを何度も描いた画家らしいのですが、この絵に限って言えばやはり主題は扉でしょうと言ってみたくなります。デンマークだかノルウェイの人であったように記憶しているのですが、名前が出てきません。フェルメールの影響もあるような画風です。モノトーンを主体とした色使いも地味ながら、主題(扉とすれば)も地味な絵です。けれども気になる、観ていると絵の中に入ってしまいそうになる、不思議な絵なのです。

PS 西洋美術館のホームページ、常設展(19世紀の絵画)を見たら、ヴィルヘルム・ハンマースホイというデンマークの画家でした。題名は「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」。扉が主題ではないんですね。

芸術的ポーズ