前後の見境

 慌てふためいたり、欲が先走ったり、正体を見失ったりすると「前後の見境」が無くなって、取り返しのつかない羽目になってしまうことがある。また意識的にこの“見境”を無くしてしまう人も居るから、そんな人は始末が悪いことこの上ない。自分では「前後の見境」位はわきまえていると思っていても、他人が見れば“すっかり見失っている”と思える場合もあり、その辺りの分別は難しい。ヒトという生き物はもともと欲望丸出しの出来損ないの代物なので、よほど注意してかからないとこの“見境”が見えなくなることが度々起こる。私は頭に血が上り易い性質なので、幾度となく“見境”を見失った。しかし今日は反省文を書いている訳ではないので、ひとまず自分のことは棚に上げて他人の箸のあげおろしに触れる。
 福島県知事の某という人は今回の原発事故による放射線汚染物の処理について、政府から自県内で当面保管するよう要請されたことに対して、大分立腹されているように報道されている。TVでの映像を見ても“突然聞く話・・・”とえらくトンガっていたように見えた。この知事は聞くところによれば原発推進を容認してきた方で、今回の事故についても県の当時者として一定の責任を負う立場にあると思える人なのだ。にも拘らず、事故以来まったくの被害者のような言動が目立った人でもある。そこへ来て今回のご立腹は如何なものと言わざるを得ない。だって自分の県で出たゴミは自分のところで処分するしかないでしょう。政府も全部自分達でやれと言っている訳でもないようだし、自治体の長なんだからまず自分達の力で出来る方策を考える、これが冷静な対応というものと思うのであるのね。とくに福島の原発周辺の町や市は、ここ数十年は人が住むことが出来ないところのようだし、その辺りを踏まえて県の当局者としての対応をどしどし打ち出していくべきだと、外野席のものとしては考えるのである。放射線による汚染物質は原発事故当事者の東電、推進してきた国、そしてその尻馬に乗った自治体の三者で解決すべき問題なのである。腹を立てている場合ではないのである。前後の見境を見失ってはいけない。

なあに 私に前後の見境がないって・・・。